基礎研究

挫折を越えて:研究者のモチベーション維持5つの秘訣!


さて、2024年も残り1カ月となりました。このタイミングで生存報告もかねて、久々にブログを更新したいと思います。

振り返ってみると、今年は私にとって興味深い1年でした。光栄にも医師や研究者の留学やキャリアについて講演する機会を度々頂き、その経験から多くの学びを得ることができました。特に印象的だったのは、講演後の質疑応答で常に共通した質問がいくつかあったことです。

その中でも最も多かったのが「研究のモチベーションをどうやって維持していますか?」といった質問でした。確かに、研究の道のりは長く、時には孤独で、挫折を感じることも少なくありません。実際、私自身も最近、論文投稿前のあまりの忙しさにバーンアウトしかけました。

この経験からも分かる通り、残念ながら私にはこの重要な問いに対する完璧な回答はありません。それでも、同じように研究の道を歩む者として、今回は私なりのモチベーション維持の方法を皆さんと共有したいと思います。

モチベーション維持5つの秘訣

1. 成功体験を妄想してみる

笑われそうですが、私は面白いデータを見つけたとき、それが大発見だった場合のことを妄想することがあります。

  • 「これは大発見なのでは?特許をとったら、島を買って一生のんびり出来るかもしれない!」
  • 「よし、これで儲けたら自分の名前の財団を作ろう(ニヤリ)」
  • 「これを学会で発表したらスタンディング・オベーション間違いなし!」
  • 「これは世紀の大発見?ノーベル賞受賞!?」

だいぶ大げさかもしれませんが、こういう妄想って意外と大切かなって思っています。というのも、研究って本当に地道な作業の連続で、すぐに結果が出るものでもないですよね。だからこそ、時々こういう大きな夢を見ることで、明日も頑張ろう!って思える気がします。

2. 研究の社会的意義を見出す

純粋な知的好奇心も大切ですが、私の経験上、自己満足だけでは長期的なモチベーションを維持することは困難なように思います。自分の研究がどのように社会に貢献できるのか、具体的なイメージを持つことも重要だと思います。

例えば、私の場合、研究成果が将来の医療現場でどのように活用され、患者さんの治療にどうに役立つのかを常に考えるようにしています。

3. ここまでの道のりを振り返る

皆さんにも、必ず人生の転換点となった出来事があるはずです。私の場合、大学院での最初の論文が却下された時の挫折と、そこから這い上がった経験が、今でも大きな支えとなっています。

No mercy.
逃げていいですか?論文の査読無しリジェクト6連続 | 見えないゴールこの記事では、筆者の経験をもとに、論文の査読無しリジェクトという挫折を乗り越える過程を生々しく描いています。研究者が直面する挑戦と心理的な苦悩について詳述し、リジェクトされた経験から得た教訓と、それを乗り越えるための心構えについて触れています。...

また、私は色んなことに挑戦している分、これまでの失敗経験も山積みになっており、上記以外にも挫折を何度も経験しています。当然、人には話したくない色んな悩みも抱えています。

ただ、振り返ってみると、その度に多くの方々に支えられ、なんとか辛い状況を乗り越えられてきました。研究のモチベーションが下がった時は、ここまで頑張ってきた自分を思い出すことで、次への一歩を踏み出す自信につながるように思います。

4. 情熱的な仲間との出会いを大切にする

「情熱は伝染する」という言葉があります。研究に打ち込む仲間と交流することで、自分のモチベーションも自然と高まってきます。学会や研究会には積極的に参加し、共同研究の機会があれば躊躇せず飛び込んでいくことをお勧めします。時には思わぬ発見や、新たな研究の方向性が見つかることもあります。

また、余談ですが、研究留学のサポートをしていると高い志をもった方々にたくさん出会うことができます。その方々の熱意に触れ、自分自身も初心を思い出すことができるので、この活動は私にとっても大きなモチベーションの源となっています。

5. 読書を習慣化する

仕事で疲れているのに「本を読むのか…」と億劫に感じるかもしれませんが、本の中には私たちの想像を超える出会いが待っています。特に、強い信念を持って道を切り開いてきた方々の自伝からは、深い学びが得られます。

例えば、私が中学生の頃に大きな影響を受けたのは、青色LEDの発明者である中村修二氏でした。実はこの頃に中村先生の講演会に参加する機会があり、その時の迫力ある語り口は今でも鮮明に覚えています。その後、著書「怒りのブレイクスルー 常識に背を向けたとき『青い光』が見えてきた」も読みました。既存の常識に縛られず、「不可能」と言われた研究に挑戦し続けた姿勢。会社の上層部からの理解が得られない中でも、自分の研究を諦めなかった強い信念。そして何より、逆境をバネに、より一層研究に打ち込んでいった情熱。彼の体験は、研究者に大きな勇気を与えてくれるはずです。

また、研究者に限らず、書籍「命のビザ」で知られる外交官・杉原千畝氏の生涯からも、多くを学びました。目の前の人々を救うために、組織の方針に反してまでも、自分の信念を貫き通した決断力。約6000人のユダヤ人難民にビザを発給し続けた、その揺るぎない人道的精神。彼の行動は、社会貢献について深く考えさせてくれます。こちらも中学生の頃に、早稲田大学で開催された生誕100周年イベントに参加して感銘を受けました。

このように、偉大な先人たちの人生からは、研究活動にも通じる普遍的な学びがあるように思います。彼らもまた、私たちと同じように大きな壁に直面し、それを乗り越えてきました。その軌跡に触れることで、自分の研究生活に新たな視点と勇気を得ることができます。

おわりに

研究の道は決して平坦ではありません。しかし、だからこそやりがいがあり、乗り越えた先には必ず新しい発見が待っています。この記事が、私と同じように研究の道を歩む皆さんの一助となれば幸いです。

次の記事では、他に多くの方からご質問いただいた「キャリアの選択方法」についても、私なりの考えをまとめてみました。そこでは、今回の「モチベーションの維持」とも関連した素晴らしいYoutube動画を紹介しています。なので、ぜひとも続けてご覧頂ければ幸いです。

それでは、最後まで読んでいただき、ありがとうございました!