レビュー記事

「私の財産告白」から学ぶー人生を豊かにするヒントと資産形成のエッセンス


4年ぶりに本多静六氏の『私の財産告白』を再読してみました。70年以上前に書かれた本ですが、あらためて読んでみると、人生観や資産形成に関する考え方が現代にも十分に通じる点が多く、驚かされます。

そこで今回は、私が特に「ここは参考になる」と思った部分を中心に、簡単にメモをまとめました。興味を持たれた方は、ぜひ原著にも目を通してみてください。

人生を豊かにするヒント

独立生活を営むための経済的基盤を築く

金銭面の自由がなければ、自分の意に反して我慢を強いられる状況が続きがちです。まずは、経済的自立を目指すことが大切であると語られています。 (p23, p68)

貧しい状況を経験する意義

貧困に苦しむ中で、人生の意味や物事の価値をより深く理解できると説かれています。一方でお金がない状態が続くと、人間関係にひびが入りやすい点にも注意が必要です。(p27, p70)

金銭の貸し借りは慎重に

お金のトラブルで、資金だけでなく友人を同時に失うことがあるので、無闇な貸し借りは控えた方がよいと述べられています。(p73)

失敗や挫折は「気分転換の機会」

転んだり立ち上がったりする過程で、うまく切り替えができるかどうかが重要な分岐点になるという考え方です。(p108)

事業は「稼ぐこと」が前提

意義があるだけでは長続きせず、利益の出る仕組みをみんなで共有してこそ、良い事業や会社が育つと説いています。(p129)

「義」と「利」をバランスよく捉える

高尚な理想(義)だけでは生活が成り立たず、利益(利)だけを追うのも危うい。両方を程よく意識するのが現実的だとしています。(p132)

最大幸福は「職業の道楽化」にある

「仕事を娯楽のように楽しめるようになる」ことこそが、人生における究極の幸せだという主張がとても印象的です。そのためには「勉強あるのみ」「努力を重ねるしかない」と強調されています。実際に仕事へ真摯に打ち込み、学びを続けていくと、自然と興味や熱意がわいてきて、仕事が趣味のような存在に変わると言います。(p185, p186)

上位はいつも空いている

本気で勉強し、実力を高める人にとっては、目標とする道が常に開かれている。努力を重ねる限り、閉ざされた扉はないという前向きなメッセージが込められています。(p191)

「仕事における成功」こそが最大の幸福をもたらす

職業面での達成感や充実感は、本人だけでなく周囲の人にも良い影響を及ぼすとされ、「人生即努力、努力即幸福」という言葉で締めくくられています。(p204)

資産形成のエッセンス

勤倹貯蓄と投資のサイクル

資産の元手は節約と貯金で作り、ある程度まとまった資金になったら投資を考えるのが基本とされています。時代は変わっても、この原則は不変だというのが本多氏の見方です。(p25, p96)

うんと働き、うんと節約する

消費面だけの節約では不十分で、本業を優先しながら副業も検討するなど、地道な努力の積み重ねこそが真の金銭的な成果をもたらすと述べられています。手っ取り早く成功しようとすると、同じくらい早く失敗するリスクがある点にも注意が必要です。(p96, p40, p122)

具体的な投資法

焦らず「時節を待つ」ことの重要性

投資を成功させるには、急ぎ過ぎず怠けず、適切なタイミングを見極める必要があるという教えです。好景気時代には勤倹貯蓄、不景気時代には思い切った投資を勧めています(p44, p48)

「本多式株式投資法」

例えば短期で2割程度利益が出たら売却し、長期で倍になったら半分を売却して残りは持ち続ける、といった独自の手法を紹介しています。大震災直後の株価暴落時に勇気をもって買い進めた事例も記されており、景気や市場動向を見極める大切さも強調しています。(p46, p47, p48)

少しの資金でも焦らない

早急に財産を増やそうと無謀な行動を取ると、かえってつまずきやすいという警鐘を鳴らしています。また、投資先を分散し、一つの事業に資金を集中させない心構えも重要だと説かれています。(p80, p93)

対人スキル

問題の本質より「感情のもつれ」によるトラブルが多い

職場では人間関係が複雑になりがちで、意外と本質的な課題ではなく感情面のこじれで問題が発生することが多いとしています。(p139)

周囲との摩擦を避けるために「思惑」も考慮する

自分が正しいと思うことでも、周囲から誤解される場合があるので、視点を広げる必要があると述べられています。(p150)

叱責や注意の伝え方に細心の注意を払う

叱る前にまずは自分自身が同じ状況にあったらどうかを振り返るとよいとも述べています。称賛と注意をバランスよく使うことや(称賛8割・注意2割で進めると効果的)、根気強く対処しても改善が見られない場合はそれ以上追求しないなど、指導上のポイントが解説されています。(p176, p177, p178)

最後に

以上が私のメモ書きです。本多静六氏の提唱する「勤倹貯蓄」や「仕事を道楽に変える」考え方は、長い年月を経てもなお、多くの人にヒントを与えているように感じました。コツコツ努力を重ねながら、自分の職業を心から楽しめるよう工夫することが、経済的にも精神的にも豊かさにつながるのかもしれません。

もしこの考え方に興味を持たれた方は、ぜひ原著を手に取ってみてください。ご自身の価値観やライフスタイルに合わせて取り入れることで、より豊かな人生を実現するきっかけになると思います。

私の財産告白, 本多静六, 2013/5/25, 実業之日本社文庫
注:著者の没後70年を経過しており、公表された原著自体はパブリックドメインに該当すると考えられます。ただし、出版社による編集・翻訳部分には別途著作権が発生している場合があります。
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