海外のラボ面接では、プレゼンテーションが成功の鍵を握ります。
多くの日本人研究者は、豊富な科学知識を持っているものの、それを英語で効果的に伝えることにしばしば苦労されています。
そして、例に漏れず、私もその一人でした。
しかし、幸いなことに、これまでに数多くのポスドク候補者のインタビューを評価してきたことから、ラボ面接のノウハウが少しずつ分かってきたように思います。
実際に、私がフィードバックを提供した3人の日本人研究者は全員、それぞれの第一志望のラボからオファーを頂くことが出来ました。
この経験に基づき、今回は研究者向けプレゼンテーションの秘訣を皆さんと共有していきたいと思います。
なお、採用プロセス全般やインタビューに関する私の実体験については、当サイトの他の記事でご確認いただけます。


プレゼンの心構えと下準備
- 全員に評価されていることを意識する。
- ゆっくり話すことを心掛ける。
- リハーサルを行う。
- 録画して分析する。
面接時は、プレゼンテーションのパフォーマンスが研究室の全メンバーによって評価されることを念頭に置きましょう。
研究室のメンバーにとって、研究指導者(PI)が誰であるかと同じくらい、一緒に働く人が誰であるかも重要になってきます。
プレゼンテーション中は緊張して早口になりがちですが、意識してゆっくり話しましょう。
本番前に必ずリハーサルを行い、同僚やメンターからのフィードバックを積極的に求めることが重要です。
これにより、発表の内容とスタイルを改善する機会を得ることが出来ます。
また、自分のプレゼンテーションを録画して見返すことで、改善点を自分自身で発見することも出来ます。
発表のお作法
- 載せたデータは全て言及する。
- 聴衆に直接話しかける。
- 立って発表する。
プレゼンテーションのスライドに含まれる各データには、必ず言及しましょう。
データを単に掲載するだけでなく、その背後にある意味や重要性を詳しく説明することが大切です。
対面での発表では、スクリーンではなく聴衆に直接話すことを心がけてください。
これにより、聴衆とのつながりが強化され、より効果的なコミュニケーションが実現します。
また、可能であれば、立ってプレゼンテーションを行うことをお勧めします。
個人的な見解ではありますが、立つことによって姿勢が改善され、声も大きくはっきりとするため、より効果的なコミュニケーションを実現することが出来ます。

*上の画像はAIが生成しているので、ちょっと英語のスペリングがおかしいですね(笑)あと、よく見るとこっそり足を3本生やした人がいます(笑)
発表の内容
- これまでの研究内容を発表する。
- 臨床研究を含める場合は、適度な範囲にとどめる。
- 研究のプロとして発表する。
ポスドク候補者の面接では、通常、これまでの研究内容が発表の中心になります。
特に医師の場合、臨床研究の業績があるとしても、基礎研究を主体とする留学を目指す場合は、それらのスライドは後半に簡潔に紹介する程度に留めておくことをお勧めします。
評価者は、あなたの実験データに対する解釈や発展の仕方など、基礎研究者としての資質を重視しています。
もし臨床研究の実績を基礎研究と結びつけて自身の強みとしてアピールしたい場合、その研究背景は非医療従事者に向けて非常に丁寧に説明する必要があります。
特に医師の場合、この部分を疎かにしがちなので、注意を払うことが大切です。
最後に、個人的な見解ですが、プレゼンテーションにおいてはプライベートな内容の取り扱いには注意が必要です。
例えば、日本人研究者によく見られる自分の年齢の公表や家族写真の掲載は避けることをお勧めします。
これらの情報は、プレゼンテーションのプロフェッショナルな印象を損なう可能性があると思います。
あなたの人間性や個性は、ラボメンバーとの個人面談で十分に示すことができます。
スライド作成
- 具体的な研究タイトルをつける。
- 目次を作る。
- ページ番号を載せる。
- 研究背景の説明は、明確かつ丁寧に。
- シンプルで理解しやすいストーリーラインにする。
- 各スライドの伝えたい内容を簡潔なタイトルとして表記する。
- 実験のシェーマを積極的に取り入れる。
- 長い文章は避ける。
最初のスライドでは、あいまいな表現を避け、具体的な研究内容のタイトルを明確に記載しましょう。
また、自分の名前の横に取得した学位を記載することはアメリカでは一般的で、PhD取得見込みの場合は「PhD Candidate」と表記します。
プレゼンテーション全体の構成としては、最初に目次を示し、次のトピックに移る際も目次スライドを再度表示することで、聴衆が内容を追いやすくなります。
各スライドにページ番号を付けることで、整理された印象を与えることができます。
研究の背景を紹介する際には、聴衆の専門分野やバックグラウンドに合わせて内容を明確かつ丁寧に伝えることが非常に重要です。
背景説明のクオリティは、続く研究データへの興味や解釈に大きな影響を与えるため、この部分には特に注意を払うべきです。
データを提示する際には、過剰な情報を省き、シンプルで理解しやすいストーリーラインを心がけてください。
データを多く載せた方が質疑応答が減って、心理的に安心するのは理解できますが、物語を伝えるのに不要なデータはごっそり削りましょう。
その代わり、発表に含めなかった大量のデータは質疑応答用に準備しておくと効果的です。
これにより、質疑応答がスムーズに進行し、あなたの深い知識と丁寧な準備が示されます。
データを示すスライドでは、各スライドの伝えたい内容を簡潔にタイトルとして上部に載せましょう。
また、実験条件が伝わりにくい場合は、実験のシェーマを積極的に取り入れてください。
さらに、スライド中に長文を載せることは避けてください。
長文は発表者にとっては伝えたい内容を忘れずに済みますが、聴衆が長いテキストを読むことはありません。
プレゼンの後半
- 実験スキルのリストは不要。
- 研究によって何を明らかにしたか最後にまとめる。
- 具体的な夢を語る。
- 謝辞を載せる(協力者や助成金を明記)。
時折、プレゼンの後半に獲得している実験手技をリストアップする方がいますが、この情報はCVに記載するのが一般的です。
なので、プレゼンでは実験スキルは、データとして示しましょう。
特に、珍しい技術を使用したデータがある場合は、それを積極的にデータとして提示することで、ラボに新しいスキルをもたらす魅力的な候補者として映ります。
プレゼンの後半では、自分のプロジェクトが具体的に何を明らかにし、どのように科学に貢献したかを簡潔にまとめましょう。
そして、プロジェクトを一通り紹介した後は長期的な目標や抽象的過ぎない具体的な夢を語ることで、あなたのモチベーションの高さを示せます。
プレゼンテーションの最後には、謝辞を忘れずに入れましょう。
これにより、どのようにしてプロジェクトを進め、誰と協力したかを示し、チームプレイヤーとしての姿勢を強調できます。
助成金の獲得経験があれば、それを取り上げるのも効果的です。
質疑応答

*この光景を目の当たりにした発表者の心情を考えると辛くなります。
- 質問はクローズドクエスチョンで大量に来ると心得る。
- 分からないことは素直に認める。
質疑応答の対応は、研究者としてのレベルを示す非常に重要な部分です。
プレゼンテーション中に質問が来ることもあれば、最後に一括で質問されることもありますので、どちらのシチュエーションにも対応できるよう心の準備をしておくことが重要です。
質問の多くはクローズドクエスチョン形式であり、これに対しては明確かつ的確な回答を準備しておくことが望ましいです。
海外のラボでは質問が積極的に行われることを予測しておきましょう。
分からないことがあれば、正直にその点を認め、「今後さらに調査する」という意向を伝えることが大切です。
最後に
以上が、私が考える研究者向けプレゼンテーションの重要ポイントです。
このような準備を整え、自信を持ってプレゼンテーションに臨むことで、成功の可能性は格段に高まると信じています。
研究者としての自信を持ちつつも、聴衆への敬意を忘れずに、あなたの情熱と研究成果を存分に伝えてください。
また、当サイトの他の記事では、一般的なプレゼンテーションの技術やPowerPointの効果的な使い方についても触れています。
興味がある方は是非ご覧ください。

それでは、皆さんの成功を心から願っています:)
Good Luck!
