雑記帳

飛行機の中にお医者さんはいませんか?

Duty Calls at 30,000 Feet: Emergency Care in the Skies

今回は、飛行機の中で診療した時のエピソードを紹介したいと思います。

臨床医はこのような状況にいつ出くわすか分かりません。

なので、私が体験してみて、大事だと思ったポイントを共有したいと思います。

 

Story

これは、私が医者6年目で飛行機に乗った時に起こったことです。

飛行機が離陸して3時間ぐらい経ったとき、機内アナウンスでお客様の中にお医者さんはいませんか?と、ドラマで聞いたことがあるようなフレーズが流れてきました。

さっそくCAさんに医者であることを伝えて、患者さんのところに行ってみると、嘔気とめまいを認めており、トイレ付近の広いスペースで横になっていました。

この時、集まった医療従事者は医者1人(私)看護師さん2人でした。

そして、CAさんに医療バックを渡されて診療スタート!

 

Result

まず、着陸のことも想定して、患者さんを可能な限り、座席に移しておく必要がありました。

なので、バイタルを確認後、他の乗客の手も借りながら患者さんを廊下から横並びの座席に移動させました。

SpO2 を測定した時に「90台前半でちょっと低くない?」と思った記憶がありますが、後日調べたら、実は上空にいると健常人でも下がるようです。

次に、他のバイタルで血圧も低かったので、初めて見たサーフローで静脈路を確保し、外液を全開で落としました。

もちろん、心疾患などがないことは確認しています。

その他、搭乗者で簡易血糖測定器を持っていた方がいたので、それを使わせて頂いて血糖値が正常なのを確認しています。

 

医療バックに関してですが、正直かなり貧弱で、見慣れた医療器具は聴診器と血圧測定器(聴診法)とSpO2モニターのみでした。

まあ、ドレーンチューブとかがあっても、逆に困るんですけどね(笑)

ちなみに、アメリカ系の航空会社だったせいか、内服・点滴薬などは全て英語表記でした。

なので、制吐剤がどれか自分の iPad mini で調べながら、薬を飲ませた記憶があります。

 

輸液負荷と制吐剤を内服したあとは、治療介入の手段がなく、ただ良くなることを祈るのみでした。

幸い、症状が少し上向きになったので私も自分の座席に戻り、仮眠をとることにしました。

しかし、その後も30分毎に「輸液を追加するか」「着陸まで間に合うか」「着陸したら救急車を呼ぶか」などの質問攻めにあいました。

 

結果的に、日本に着くまでつなぐことが出来ましたが、着陸後にも症状が続いていたため、私の指示で最寄りの病院に救急搬送してもらいました。

余談ですが、私は自分の身を守るためにも、診療中はずっと白紙に「カルテ」を手書きで書いていました。

 

Discussion

いざ、体験してみると慣れない環境での診療だったので、かなり疲れた覚えがあります。

また、病状が急変する可能性があり、日本に着くまで緊張状態が続きました。

 

後日談ですが、診療を終えたあとにCAさんから「名前と住所を教えて欲しい」と言われたので、セコい話、何か貰えるのかなとちょっとだけ期待していました。

そして、忘れかけていた帰国後2ヶ月、航空会社から2通の封筒が届きます。

 

ドキドキ。

 

まず、1つ目の封筒を開けると、そこには A4 1枚の紙に英語で感謝の言葉かかれていました。

残念ながら、捨ててしまったので詳細は忘れましたが、「あなたにはアロハ・スピリッツが宿っている」というようなことが書かれていました。

 

アロハ・スピリッツ。

 

何だか自分が強くなった感じを持ちつつ、さらに期待を込めてもう1つの封筒を開けてみると、

そこには、驚くことに

 

 

 

全く同じ内容のA4 1枚の紙が入っていました。

 

 

 

のちに、私はこの現象を「ダブル・アロハ・スピリッツ」と命名し、高い評価を受けました。

 

 

 

さて、何だか疲れたので、今回はこんなところで終わりにしたいと思います。

何か貰えるかな」とか期待してた自分にアロハ・スピリッツが本当にあるかは別として、なかなか出来ない体験ができたと思います。

搭乗中に手を上げるか、上げないかは恐らく自由だと思いますが、もし診療する機会があったら参考にしてみて下さい。

以上、最後まで読んで頂きありがとうございました。