米国研究留学のいま:2026年に感じていること

今回は少し雑記的に、最近の米国研究留学を取り巻く状況について、私が感じていることを書いてみたいと思います。
あらかじめお断りしておきますが、以下の内容はあくまで私個人の経験と、私がこれまで15名以上の医師の留学をサポートしてきた範囲で感じたことに基づいています。分野や地域によって状況は異なると思いますので、参考程度に読んでいただけると幸いです。
研究費の獲得が厳しくなっている
まず、最近もっとも強く感じているのが、アメリカにおける政府系の研究費(NIHグラントなど)の獲得が厳しくなっているということです。
その影響で、PIたちはプライベートの財団に活路を見出そうとしていますが、1つの財団に数千件もの応募が殺到するような状況になっています。私のPIは審査員側になることもあるので、この状況を「もうカオスだよ」と言っていました。
このような研究費の逼迫は、ポスドクの雇用にも直結しています。ポスドクの人件費はPIの研究費から捻出されるので、グラントが取りにくくなれば、必然的にポスドクを新たに雇う余裕がなくなります。実際、私がサポートしている範囲でも、例年に比べてポスドクを募集しているラボが減っている印象があります。
さらに、ポスドク自身も自分で助成金を獲得してくることが、これまで以上に強く求められるようになりました。もともとアメリカではポスドクがフェローシップを持っていることは大きなアドバンテージでしたが、最近ではそれが「あったら嬉しい」から「ないと厳しい」に変わりつつあるように感じます。
アカデミックポジションも狭き門に
こうした研究費の厳しさは、ポスドクの雇用だけでなく、その先のキャリアにも影を落としています。テニュアトラックポジションも例年より少ない印象を受けます。
印象的だったのは、私の周囲でとても期待されていた若手PIが、アカデミアを離れて企業の研究者に転職したことです。その話を聞いた私のPIも「時代が変わったな」と漏らしていました。
さらには、これまでアメリカのトップ大学でテニュアを獲得し、すでにPIとして独立していた方々の中にも、母国に帰るケースが散見されるようになりました。テニュアを持っていても、研究費が取れなければラボの運営は立ち行かなくなるので、ある意味では当然の選択なのかもしれません。
ラボの空気感の変化
ここからは少し個人的な話になりますが、働いていて感じた変化についても触れておきます。
まず、これまでいわゆる「放置」されていた生産性の低いラボメンバーが、数名クビになりました。研究費が厳しくなれば当然の流れかもしれませんが、身近で目の当たりにすると、アメリカの厳しさを改めて実感します。
また、試薬の注文にも以前より気を遣うようになりました。以前はあまり値段を気にせず注文できていたのですが、「本当にこの試薬が必要か?」と吟味するようになりました。こういった小さな変化からも、研究費の状況が体感できます。
ビザの話:J1は現状維持、H1Bは激変
ビザに関して、少なくとも私が把握している範囲では、研究者が主に使うJ1ビザ(交流訪問者ビザ)の発行については、特別これまでと大きな変更はないように思います。留学を検討している方にとって、この点はひとまず安心材料です。
一方で、H1Bビザに関しては大きな動きがありました。私自身、J1ビザからH1Bビザへの切り替えを検討していた時期がありました。しかし、2025年9月にトランプ大統領が署名した布告により、H1Bビザの新規申請に$100,000(日本円で約1,500万円)の手数料が課されることが発表されました。
当時は色々な情報が錯綜しており、正直なところ「J1の滞在期限が来たら強制帰国になるのでは」ということが頭をよぎっていました。自分の研究キャリアがビザの問題で途絶えるかもしれないというのは、精神的にかなり堪えました。
しかし、その後に出された公式のガイダンスによると、この$100,000の手数料は主に米国外から新規にH1Bを申請する場合に適用され、すでにJ1などで米国内に滞在している場合には免除されることが分かりました。これを知った時は本当に安心しました。
結果的に、詳細は別の記事で書こうと思いますが、5年以上アメリカに滞在する必要がなくなったため、H1Bビザの申請に必要な書類はすべて揃えたものの、最終的には申請しませんでした。
おわりに
今回はここ最近の米国研究留学事情について、私が見聞きした範囲で率直に書いてみました。厳しい話が多くなってしまいましたが、発想を変えると、日本の財団から自分の給料を完全にカバーできる助成金を獲得して渡米すれば、PIからすると「人件費ゼロで優秀なポスドクが来てくれる」わけで、研究費が逼迫している今だからこそ、こうした人材はむしろ重宝されるのかもしれません。
今回は短めの記事ですが、この記事が留学を検討している方にとって、少しでも参考になれば嬉しいです。状況は常に変わるものなので、最新の情報は必ずご自身でも確認するようにしてください。
それでは、また!